スポーツの概念と歴史の知識

 

 

■スポーツの概念とは

 

 

スポーツの意味は現代では「楽しみや健康を求めての自発的運動」「競争・競技として行われる運動」となっていますが、スポーツはそれぞれの時代や社会における休養・気晴らし・遊び・娯楽と深く関わってきました。従って、その意味・内容は必ずしも固定的なものではな く、生活習慣の変化に応じて様々に変化しているのです。

 

 

しかし、スポーツの国際化にともなって、その概念を規定し、その定義を明確にすることによって国際的に共通の意味内容を持つ言葉として用いる努力もされてきました。

 

 

20世紀前半、急速に発展する国際競技大会では、参加資格として重要であったアマチュアの身分をめぐる論争が絶えませんでした。これを解決するために、1964年の東京オリンピック・スポーツ科学会議で、国際共通語としてのスポーツの定義や領域等が提言されるようになり、4年間の国際的な検討後、1968年のメキシコオリンピック・スポーツ科学会議において「スポーツ宣言」として採択され、世界共通のスポーツのとらえ方・考え方として尊重されるようになったのです。

 

 

スポーツ宣言は、スポーツを「遊戯の性格を持ち、自己または他人との競争、あるいは自然の障害との対決を含む運動」と定義し、続けて 「フェアプレーのないところには、真のスポーツは存在しない」と述べ、スポーツにおけるフェアプレーの重要性を特に強調しています。

 

 

また、近代化が進んで文明病や成人病、生活習慣病などの健康不安に対して1960年に西ドイツ政府が「ゴールデンプラン(スポーツの大衆化政策)」を発表したのを皮切りに、西ヨーロッパや英米、日本等の先進国は 「みんなのスポーツ」を合言葉に、一斉にスポーツの大衆化政策を展開することになります。

 

 

大衆化したことで、女性や高齢者を含む一般市民も対象となったことから、スポーツを競争・競技中心から一層広げてとらえることが必要となりました。こうした中で、1975年に「ヨー ロッパ・みんなのスポーツ憲章」を採択し、その中でスポーツを「楽しみや健康を求めて自発的に行われる運動」と定義したのです。これによりスポーツの社会的拡大が起こりました。

 

 

日本は高齢化社会に突入しています。人生・生活の質「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」を豊にすることが、個人にとっても社会にとっても重要な課題となりました。スポーツは、暮らしの中に健康・楽しみ・交流を広く生み出す効用があり、生涯スポーツとしてこれからの生き方暮らし方に必要なものです。

 

 

■スポーツの歴史と発展とは

 

 

「スポーツ」という言葉の語源はラテン語のデルポターレと言われ、19世紀から20世紀にかけて世界的に広まりました。現在、使っている「スポーツ」の意味は厳格にいえば近代英国で形成され誕生したものと言えます。

 

 

しかし、歴史的に見てみると身体運動・運動競技を「スポーツ」として確立するには、それなりの文明や社会の発展が必要となります。つまり、スポーツをする価値が生まれるためには、人々に共有され社会的に認められなければならないからです。

 

 

最初に発展したのは古代ギリシャ・ローマといわれ、貴族戦士の格闘技などが中心に行われて、質実剛健の市民育成に力を注ぎました。

 

 

中世に移り、スポーツは騎士に代表される上流階級と農民に代表される庶民スポーツと階級分割が行われました。この頃は、騎士が名誉をかけて戦う馬上槍試合や庶民が村対抗などで行うモブ・フットボールなど、どちらも命を落とす危険のある荒々しいゲームでした。

 

 

18世紀後半から19世紀前半にかけてイギリスでパブリックスクールが繁栄しましたが、初期のパブリックスクールの生徒たちは、まだ中世の名残のある野蛮なスポーツを行っていたために暴力的で弱い者いじめを行っていたのです。

 

 

このような現状を変えるために「トーマス・アーノルド」がスポーツ改革に乗り出しました。それが、娯楽や気晴らしのものから教育手段への転換こそ「近代スポーツ」の鍵になったのです。

 

 

■現代スポーツとは

 

 

19世紀後半には現在のスポーツ環境の基礎となるルールの統一や統括組織が編成されています。さらに、近代化を急ぐ各国の高等教育に人間形成や教育的性格を兼ね備えた特徴をもつ「近代スポーツ」が積極的に導入されたことにより全世界へと伝播したのです。

 

 

近代スポーツが普及する中で各国の生活様式や文化を反映して徐々に変わっていきました。特にジェントルマンの行動を基盤とするスポーツマンシップは労働者階級の中では弱体化してしまい、勝敗のみを優先する各国間の競争に突入しました。

 

 

勝利の社会的重要性が高くなるにつれ、スポーツの技術的、用品・用具などの進歩はあったものの、強いものを選んだ結果、アマチュアリズムの衰退や政治的中立という近代スポーツ思想の弱体化となったのです。

 

 

スポーツの現代化は、国際競技の社会的影響力の増大により国家間の争いに発展し、その成果に政治的威信をかけるというような「スポーツの政治化」が始まりました。日本にスポーツ省が出来たのもG8の中でオリンピックメダル獲得率が最下位ということが理由の一つになっていることです。もちろん、公益性として国民の健康を考える生涯スポーツによる社会保障費削減なども含まれます。

 

 

現代スポーツの特徴として見逃せないのは「スポーツの経済化」です。プロスポーツが発展しスポーツ経済活動が広がり、スポーツをブランド化し大衆化することによって膨張しています。

 

 

スポーツのメディア化により世界各国で行われている競技会をリアルタイムで見ることができるようになり、誰でもがスポーツに参加できる環境が整っています。これらのメディア特性を使い、政治も経済もスポーツ界を活用しているのです。

 

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