臨床実験:競技における最適な緊張状態への導き方
 

 

 

【目的】
近年私たちがスポーツをするときに「メンタル」は欠必要不可欠なものとなっており、その中の要素として、緊張状態があげられる。

 

緊張は全くなかったり、過度にあり過ぎると成績に悪影響を与えるが、適度にあることは選手のパフォーマンスをあげることに役立つ。そこで、緊張とリラックスのバランスのうまく取れた、自分にとって最適な緊張レベルへと導くための方法を、脳波を測定しデータを取ることで検証した。

 

【方法】
専門学校テニスコースの生徒複数名を対象に、Brain Athleteという脳波測定器を使用し、次の3つの方法について1人各10回ずつ実験を行い、脳波を測定した。

 

@ 凝視法:一点集中の集中力カード(残像メンタルトレーニングカード)を20秒間注視し、目を閉じて残像を追う

 

A 呼吸法:目を閉じて2秒で息を吸い3秒で吐く深呼吸を2回繰り返し、その後自然呼吸で10秒間の計20秒間

 

B リラクセーション法:目を閉じて各個人の好きな音楽を好きな部分から20秒間聴く

 

集中度を「β波」、リラックス度を「α波」の強さで数値化(0〜100)され、それぞれ60以上で高まっている状態となる。集中度、リラックス度ともに60以上の状態を「ゾーン」と呼び、一番よいパフォーマンスが発揮できる状態であるとされている。スポーツ心理学における緊張の逆U字曲線で、ゾーンのイメージ図である。

 

 

 

【結果及び考察】
下表は各項目の実験計測値の結果である。

 

左下図のスポーツ心理学における逆U字曲線に当てはめながら見ると、3項目中、音楽を聴くことは平均リラックス度の値が一番高いので、緊張が高すぎる状態の場合に行うとよい。深呼吸は平均集中度、集中維持率ともに数値が高いので、緊張が低すぎる状態の場合に行うことで最適な緊張状態へと導きやすくなる。
また、ゾーンの状態へと導くためには集中度、リラックス度の両方の平均が一番高い集中力カードを使用するとよい。

 

【まとめ】
今回の実験でこの3つの方法を検証したところ、リラックス度が高まるもの、集中度が高まるもの、と違う効果が得られた。

 

また、ゴルフや野球、テニスはゾーンよりも緊張レベルが少し低い水準、バスケットボールやサッカーはゾーンの最適水準、陸上競技や柔道などは緊張レベルが少し高い水準、と各競技の競技特性によって最適な緊張レベルは異なる。さらに個人の性格、その日のコンディション等によってもその時の緊張状態は異なってくるため、各競技やそのときの個人の緊張状態に応じて使い分けていくことが望ましい。

 

これらの方法を使い、緊張状態をコントロールすることで、さらなるパフォーマンスの向上が期待できる。競技において最適な緊張状態へと導くためには、選手自身がそれぞれの緊張状態に合った方法を使って、実践していくことを提案する。

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