スポーツ指導者の倫理の知識

 

 

近年、スポーツ界を揺るがす倫理的問題の暴力事件やスキャンダラスな事件が多発して、指導者養成テキストにも2014年から「スポーツ指導者の倫理」が新しく増えました。これらの問題をどのように解決していくか、スポーツ界全体に問われています。

 

 

■倫理的問題が起こりやす要因とは

 

 

なぜ、このような問題が起こるのか?スポーツの世界では指導者・生徒、上級生・下級生、先輩・後輩などの上下関係が生まれてしまいます。良い悪いは別にしてこのことがハラスメント(嫌がらせ)につながる可能性を秘めていることは間違いありません。

 

 

指導者は生徒や選手に対して非常に大きな影響力を持っていることを自覚しなければなりません。特に思春期の年代のプレイヤーは感受性が強く、指導者、先輩、上級生などの考え方に感化されてしまいます。指導者の何気ない行動や言動がプレイヤーの価値観にまで作用し、影響を及ぼすことを自覚しなければなりません。

 

 

ここでは人道に反する行為として、身体的暴力、言葉の暴力、性暴力、セクシュアルハラスメント、差別。反社会的行為として、正座や断髪、ドーピング、金銭問題などが取り上げられています。
これらの倫理に反する行為が成長期のプレーヤーには大きく影響することがあり、最悪の状況では自殺の報告もあります。

 

 

倫理違反のすべては指導者の欲に起因するものだと言えます。自分の名誉欲ため、自分の支配欲のため、自分の性欲のため、自分の金銭欲のため、など、指導者の基本的な考えであるプレイヤーズファースト、指導者はあくまでも脇役ということを忘れてしまった結果です。

 

 

しかし、スポーツにおける倫理的な問題は指導者だけに責任があるわけではありません。最初はプレイヤーのために、チームのためにと頑張っていた指導者も多いと思います。結果を出せば更なる期待に応えなければならない、周りからの期待が大きいほどプレッシャーが膨らみます。そういった環境が問題行動に走らせることにもつながります。

 

 

確かに指導者は自分の意思を強く持って社会に認められる正しい行動が大切です。しかし、スポーツ界やマスコミの報道など社会全体の取り扱いも問題があります。応援には頑張る勇気をもらえますが、過剰な期待をかけ過ぎると壊れてしまうこともあるのが人間です。

 

 

もう一つ大切なことは、若い指導者が先輩指導者からの誘いを、正しい認識と判断を持って対応できるかどうかが重要です。先輩から勧められて倫理違反を起こすこともスポーツ界では珍しくありません。「先輩は後輩を助け、後輩は先輩を敬う」という言葉があります。先輩後輩の上下関係は決して悪いわけではなく良い意味でお互いが成長できる関係であることが重要です。


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