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■戦術の基本的な考え方の知識

 

 

 

 
 
1、戦略と戦術

 

戦略と戦術とは、もとは古代ギリシャの兵学に由来する概念です。スポーツにおける戦略とは、競技活動にかかわるあらゆる計画と処置とみなされ、戦術とは、ある特定の試合中の行為を意味します。テニスの現場における種々の戦略については、対象とするプレイヤーの発育発達段階および到達目標をもとにP(計画)D(実行)C(評価)A(改善)サイクルを循環させることが必要です。

 

 

2、テニスの戦術の原則的な考え方

 

テニスはネットを挟んで相手とやりあい、交互にボールを打球し合うことでポイントを競うネット・壁型の競技です。そのため、自分のコートにボールがある局面で必要な戦術能力は狙った場所へ適切なスピードでボールをコントロールするボールコントロール能力が求められます。また、相手のコートにボールがある局面での必要な戦術能力は、合理的な場所で相手のボールを待つポジショニング能力です。

 

それに加えてテニスは独特のスコアリングシステムを採用していますので、ポイントを積み重ねることだけでなく、ゲームを取るために重要なポイントやセットを取るために重要なゲームをいかに取得するかが勝敗に影響します。そのため、試合の流れを見極めて戦術を用いることが必要なのです。

 

 

3、戦術を支える要素

 

 

@ー心理的要素

 

「心」の要素は、結果に一喜一憂することがない「精神的に落ち着いた状態」で状況を判断し、その判断に基づき「自然にプレー」することが求められます。

 

 

Aー技術的要素

 

「技」の要素は「ボールコントロール能力」です。コート上のさまざまの場所から狙ったエリアへ、適切な高さ・速度・回転で打球することが求められます。さらに、適切な場所へ適切な時間までに移動する「フットワーク」も求められます。

 

 

Bー体力的要素

 

「体」の要素はポジショニングに関わるものとボールコントロールに関するものに分けられます。ポジショニングに関わるものとして、移動における「スピード」と「持久力」ボールコントロールに関わるものとして強い打球が出来る「筋力」と「バランス」が必要です。つまり、各部の筋肉をダイナミックな動きの中でも発揮できるような能力を高めることが必要なのです。

 

 

4、ボールコントロール能力

 

 

プレーヤーは自分のコートにボールがある局面でのみボールを扱うことができます。その局面で相手コートの狙ったエリアへ、適切な速度・高さ・回転で打球できる能力がボールコントロール能力です。しかし、実際の試合ではサーブ以外、相手の返球に対応しなければならないので、相手の状況を判断した上でボールをコントロールする必要があります。

 

 

5、オープンコート

 

 

@ー空間的オープンコート

 

プレーヤーが相手のボールを待つための合理的な場所、つまり「合理的待機位置」に戻れないときに生じるエリアを示します。

 

 

Aー時間的オープンコート

 

相手のポジショニングが正確で空間的に開いていないエリアであっても、早いタイミングで打球することでポジショニングの時間を奪い、相手が返球できないようなウィナーを狙う、または相手のエラーを誘うという考え方です。ネットプレーも時間を奪う戦術です。

 

 

Bー心理的オープンコート

 

相手の予測に反したエリアへの打球や、テニスのセオリーとは異なる配球をすることにより、いわゆる「逆を衝く」という状況を作り出すことです。

 

 

6、ポジショニング能力

 

 

ポジショニング能力とは、相手コートにボールがある局面で、次に自分が打球するために合理的な場所で相手のボールを待つ能力のことです。

 

 

@ー守備的ポジショニング

 

相手コートのどこにボールがあるか、相手がどのような体制で返球してくるかなど、さまざまな状況を判断して合理的待機位置をとることが基本になります。しかし、相手のレベル、返球時の体勢に応じて合理的待機位置を調整する必要があります。

 

 

Aー攻撃的ポジショニング

 

相手の返球時の状況を把握することで、ポジショニングを攻撃的に利用することができます。自身の打球によって相手の返球ポジションをベースライン後方にしたり、相手を左右に走らせて返球時の体勢を崩したりすることによって、時間的オープンことを作りだせます。攻撃的ポジショニングには、的確な状況把握能力が不可欠なのです。

 

 

7、試合における戦術様相

 

 

テニスの試合においてポイントは常にサーブから始まることから、サーブは最も重要な戦術とも言われています。つまり、サーブでのボールコントロール能力は戦術的に必須の能力なのです。

 

 

一方でリターンは、相手が十分に狙いを定めて打球をするサーブを受ける戦術であることから受け身の戦術といえます。さらにサーブは通常のラリー場面とは異なる回転で打球されることが多く、返球が容易ではないため、確実に返球することが求められます。

 

 

ラリーの場面においては、相手に返球されないことを目指して技術を駆使します。ラリーの状況はおよそ、攻撃的、守備的、ニュートラルに分けられ、それらに応じてポジションをベースラインの前・上・後などに使い分けて対応していきます。

 

 

最適なポジショニングは、相手の返球に対応して最適な打球ポジションに移動する確率を上げることで、自身のボールコントロールが容易になるのです。

 

 

サーバー、レシーバーのいずれにおいても、ラリーの主導権を握る機会を得るには、自身のポジショニングをベースライン上からベースラインの内側に取れる機会を効果的に判断できるかどうかに関わっており、ここでもポジショニング能力が求められています。

 

参考資料:テニス指導教本T


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