■テニスの栄養学の知識

 

 

 

 

 

1.テニスプレーヤーと栄養

 

 

日常生活における栄養摂取は、練習や試合中のパフォーマンスを維持するだけでなく、フィジカルトレーニングによる身体適応の効果を最大限に高めるためにも重要です。

 

体力や技術と同じように、栄養摂取もプレーヤーの健康と体力の維持・向上に必須の要素であり、日頃からトレーニングしなければなりません。

 

また、成長期のジュニアプレーヤーには、トレーニングで消費したエネルギーを補うだけでなく、適正な成長を促す栄養摂取に気をつける必要があります。

 

 

2.基本の栄養素

 

 

@糖質(炭水化物)

 

 

糖質は、運動時のおもなエネルギー源であり、単糖類、少糖類、多糖類があり、単糖類にまで消化されて小腸で吸収されます。

 

テニス競技を含む中・高強度の有酸素運動は、脳内に蓄積されたグリコーゲンをエネルギーとして頼るが、筋グリコーゲンの枯渇は筋疲労を引き起こし、パフォーマンスを低下させます。

 

いかにして事前の食事摂取で筋肉にグリコーゲンを蓄積し、運動中の筋グリコーゲンを維持するかが勝敗の分かれ目になるのです。

 

高炭水化物を摂取した場合は、筋に蓄えられているグリコーゲンの量が多く、運動の継続時間も長くなります。

 

よって、摂取する炭水化物の量に伴って筋に蓄えられるグリコーゲンの量が変化するので、トレーニングや試合後は早急に炭水化物を摂取し、グリコーゲンを速やかに蓄積させ、次の試合に備えることが重要なのです。

 

 

 ■糖質の分類

 

   分類       成分                 含有食品

 

  単糖類      ブドウ糖                  ブドウ糖
         果糖など                  果物

 

     少糖類        しょ糖(ブドウ糖+果糖)        砂糖
                       麦芽糖(ブドウ糖+ブドウ糖)など            麦芽(水あめ)

 

     多糖類         でんぷん(ブドウ糖数千個結合)              穀類 芋類 など
                       グリコーゲン(ブドウ糖約5万個結合)      動物性食品

 

 

A脂質(脂肪・油脂)

 

 

脂質は、油類、バター、マヨネーズや肉、卵、乳製品に含まれます。体内では中性脂肪として蓄えられ、細胞構成成分やホルモンの材料にもなります。

 

脂質には2種類あり、飽和脂肪酸(動物性)を多く含む通常個体の脂肪と、不飽和脂肪酸(植物性)を多く含む通常液体の油があります。

 

体内では合成しきれない理由から、必ず摂取すべきである必須脂肪酸は液体である油に多く含まれています。

 

脂質は、他の栄養素に比べ高エネルギー(1g/9Kcal)で効率の良い栄養素ですが、摂取過剰の脂質は体脂肪として蓄積され、体重増加を引き起こしパフォーマンスを低下させてしまいます。

 

近年、日本でも食事の欧米化が進み、資質の摂取が増加傾向にあります。脂質の摂取を減らすためには、スナック菓子、インスタント食品、バター、マーガリン、揚げ物は減らし、肉の脂身や鳥皮は省き、乳製品も低脂肪のものを選ぶようにしなければなりません。

 

 

Bタンパク質・アミノ酸

 

 

タンパク質は、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品に豊富に含まれます。タンパク質は身体を構成する主要成分であり、生体内反応として機能しているホルモンや酵素の成分としても必須な栄養素です。

 

激しいトレーニングや試合などでは筋グリコーゲンや体脂肪がエネルギーとして消費されるだけでなく、筋タンパク質が分解されエネルギーとなって消費されます。

 

また、トレーニングなどで筋組織が損傷を受けた際にも、修復時の体タンパク質合成において、タンパク質・アミノ酸の摂取は非常に重要なのです。

 

タンパク質は消化器官でアミノ酸に分解されて吸収されますが、体内で必要量を生成できないアミノ酸を「必須アミノ酸」と言います。

 

その中でも分岐鎖アミノ酸(BCAA)であるバリン、ロイシン、イソロイシンは、筋タンパク質の合成を促し、分解を抑制する特徴的なアミノ酸であり、特に動物性たんぱく質に多く含まれます。

 

テニス競技のような高強度の持久性スポーツ選手の必要な量は、体重あたり1.2〜1.7g/日と示されています。

 

 

Cミネラル(無機質)

 

 

人体を構成する元素のうち、酸素、炭素、水素、窒素を除いた残りの元素がミネラル(無機質)と呼ばれています。

 

主なミネラルにはカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、鉄があり、
ミネラルは身体の構成成分や生理作用を調節する機能をもちます。

 

 

■ミネラルの働きと含有食品

 

    種類                          働き                                                   含有食品

 

カルシウム       骨や歯の構成 筋の収縮・弛緩 神経情報伝達       乳製品 小魚

 

マグネシウム    筋の収縮・弛緩 神経情報伝達                           海藻 葉野菜 納豆

 

カリウム         細胞内の浸透圧の維持                                       野菜 いも 果物

 

ナトリウム      筋の収縮・弛緩 細胞内の浸透圧の維持                 食塩 味噌 しょうゆ

 

鉄                 赤血球の構成 酸素運搬                                     赤身の魚や肉  レバー  あさり

 

 

テニス競技ではダッシュ&ストップを繰り返す、骨形成に優れたスポーツです。効果を上げるためには、食生活でカルシウムとビタミンDを同時に摂取することで骨の形成が促進されます。

 

ナトリウムやカリウムは細胞内の浸透圧を調整し、ナトリウムは神経伝達や筋の収縮などに関与します。そのため、競技パフォーマンスに影響を及ぼすことがあり、競技中の水分補給でミネラルの損失を防ぐためにスポーツドリンクなどで予防します。

 

鉄は貧血防止には欠かせないミネラルです。貧血になると酸素の供給が滞り、競技パフォーマンスに影響が出ます。

 

貧血は鉄の摂取だけでなく、ヘモグロビンを構成するタンパク質も同時に摂取しなければ改善しません。

 

 

Dビタミン

 

 

ビタミンは、脂溶性水溶性に分けられます。特にエネルギー供給に関係するのがビタミンB群で糖質・脂質・タンパク質をエネルギーに変換する補酵素として働きます。

 

疲労感が残る場合はビタミンB群が不足している可能性が考えられます。

 

水溶性のビタミンは、体内に蓄積できないので毎日摂取することが望まれます。

 

 

3.食生活における栄養バランス

 

 

@エネルギー摂取量

 

 

成人では各個人のエネルギー摂取量が適正かの判断は、体重の増減を指標とします。一方、ジュニアプレーヤーなどの成長期の場合は体組成の変化を指標とします。

 

適正な体重や体組成には個人差があり、自身の体調や競技成績とともに、無理なく維持できる体重が適正であると考えられます。

 

 

A食事内容とバランス

 

 

一日に「何を」「どれだけ」食べたらよいのか、バランスのとれた食事を考えるには食事バランスガイドの活用が有効です。

 

テニスプレーヤーだからといって特別な料理を食べるのではなく、まずは毎日の食事をバランス良く食べることが、毎日の練習をやり遂げる身体を作ることになるのです。

 

 

Bジュニアプレーヤーの栄養摂取

 

 

ジュニア期は成長過程であるため、栄養摂取を成人と同じように考えてはいけません。体格は小さいが、発育発達の途中であり、新陳代謝が活発におこなわれているため、エネルギー必要量は成人とほとんど差がないという特徴があります。

 

なので十分な食事量を確保する必要があるが、一度に摂取できる量が少ない場合があるので、食事の回数を増やすなどの工夫が必要です。

 

 

4.トレーニング時の栄養

 

 

@トレーニング前の栄養

 

 

トレーニング開始の3時間前までに食べ終えるようにします。また、脂質摂取が多いと消化に時間がかかり、食物繊維が多いと胃腸の不快感が起きることがあるため、摂取は控えめにします。

 

グリコーゲン貯蔵量を増加する目的で糖質を多く摂取し、そして水分補給を十分にしておきます。

 

 

Aトレーニング中の栄養

 

 

トレーニング前後における体重減少量は発汗によるものなので、減少量に見合った水分補給が必要です。補給する水分にはミネラルを含んだもの、運動中の血糖値を維持し、筋グリコーゲンの枯渇を予防するためには糖質が含まれるものが求められます。

 

 

Bトレーニング後の栄養

 

 

トレーニングで消費したグリコーゲン回復のために糖質を摂取します。また、筋の修復・合成のためにタンパク質を摂取しなければなりません。どちらもトレーニング後、すぐに摂取することが効果的と考えられます。

 

 

C試合時の栄養

 

 

試合だからといって普段と異なる特別な食品を摂取するのではなく、食べ慣れている食品を摂取することがおすすめです。そのため摂取する食品の種類や量、タイミングなどはトレーニング時に試しておく必要があります。

 

 

参考資料:テニス指導教本T

テニスの栄養の知識と知恵

 
■テニスの栄養・食事学の知識
 

 

 
@−栄養素の役割

 

1.基本的な栄養素の働き

 

@糖質(炭水化物)

 

動時の主要なエネルギー源の一つで、主食のごはんやパン、麺類にデンプンの形で豊富に含まれています。糖質は単糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース)に消化吸収されます。血液中のブドウ糖は筋肉縮小のエネルギー源となる他、脳などの神経細胞のエネルギー源ともなります。このため、血中ブドウ糖濃度の過剰な低下は疲労の一因となります。

 

Aタンパク質

 

タンパク質はアミノ酸に消化されて吸収されます。アミノ酸は体内でタンパク質に合成され、筋肉などの身体の材料となる以外に、酵素やホルモンなどの材料にもなります。

 

B脂質

 

脂肪には、中性脂肪・コレステロール・リン脂質などがあるが、エネルギー源として重要なのは中性脂肪なのです。脂肪は1gあたり約9kcalの熱量、炭水化物は1gあたり約4kcalなので、脂肪は高いエネルギーを持った栄養素だと言えます。

 

Cビタミン

 

身体のいろいろな代謝は酵素によって行われ、ビタミンは酵素の働きを助ける補酵素として機能するものが多いのです。

 

Dミネラル(無機質)

 

身体の構成成分になったり、身体機能の調節に関与したりしています。ミネラルには補酵素として働くものもあり、スポーツで特に重要なミネラルは鉄とカルシウムです。

 

E水分

 

水分は身体の約60%を占めています。スポーツ時には体温が上昇しすぎないように発汗が起こりますが、水分補給が不足すると脱水し、運動能力が低下したり熱中症の危険性が増加します。

 

2.三大要素:糖質、タンパク質、脂質

 

@エネルギー源(糖質と脂質)の補給と三大要素のバランス

 

スポーツ選手にとって望ましい三大要素のエネルギー比率は糖質50%以上、タンパク質15%程度、脂質20〜30%。この比率は、日本食の比率です。

 

Aタンパク質

 

タンパク質は筋肉や骨のコラーゲンの材料となるので、スポーツ選手の体づくりにとって大切な栄養素です。

 

1)筋肉づくり

 

一般の人のタンパク質所要量は約1g/kg/日だが、スポーツ選手は2g/kg/日程度が必要です。

 

2)骨づくり

 

骨の主要な構成成分はカルシウム・リン、それにタンパク質である。カルシウムは600〜900mg必要です。リンは通常の食品中に豊富に含まれており不足することはありません。

 

3.ビタミンとミネラル:微量栄養素

 

@どんなときに不足しやすいか

 

減量のために極端に食事を減らしたり、偏食が激しかったり、ジャンクフードなどの微量栄養素の少ないものを 多量に摂取して食事のバランスが悪くなると不足します。

 

AビタミンB群

 

ビタミンB群はエネルギー生産やタンパク質合成に必要 なので、スポーツ選手にとっては大切なビタミンです。

 

B抗酸素ビタミン

 

運動時には酸素消費量が安静時の数倍に増加するなどの理由で、スポーツ選手では活性酸素障害が増加することが懸念されています。

 

Cカルシウム

 

カルシウムは骨の形成に重要です。カルシウムが不足すると、骨塩密度が低下し疲労骨折の危険性が増します。

 

D鉄

 

鉄は酸素を運搬するヘモグロビン、貯蔵するミオグロビン、そしてエネルギー生産に関わる酸素の構成成分です。

 

 

A−エネルギーと栄養バランス

 

テニスでのエネルギー所要量は男子で3000〜3500kcal女子で2500〜3000kcal程度です。

 

1.エネルギーの過不足の指標は体重・体組成

 

エネルギー摂取量が適正かどうかは体重の変化でわかります。成人では、エネルギー摂取量が適正なら体重は変化しません。トレーニング期間中は、体重を摂取できるエネルギーを摂取することが重要です。

 

2.バランスの良い食品構成

 

スポーツ選手にとってバランスの良い食事を構成するためには、健康のために食生活の指針として示されている「食事指針ピラミッド」を基準として用いています。食事指針ピラミッドでは、底辺に近い食品ほど重要で量的にも積極的に摂取することが勧められています。

 

 

B−水分補給 

 

スポーツでは、発汗・脱水で熱中症にならないようにするために水分補給が重要です。

 

脱水量は運動後の体重減少でわかる。体重減少2Kg≒2リットルです。汗には水分だけでなく、ナトリウムをはじめとする電解質(ミネラル)が含まれている。多量に発汗した時にナトリウムを補給しなければ、血中ナトリウム濃度が低下し、危険な状態(痙攣・頭痛・吐き気など)になります。

 

このため脱水から回復していないにもかかわらず水を飲みたくなくなったり、尿などで余分な水分が排泄されたりして、脱水から回復することができないことがあります。これを「自発的脱水」といいます。

 

運動時の水分補給の目安は、15分〜20分毎に150〜200ml程度で、体重が減少しないように補給するのが基本です。 

 

 

C−トレーニング時の栄養 

 

1.トレーニング前の栄養

 

ポイント…1.水分を十分に含んでいること。2.脂肪や食物繊維が少ないこと。3.糖質を多く含むこと。4.タンパク質はほどほど。5.普段から食べ慣れているものを摂るようにすること。
通常はトレーニングの3時間ほど前に食べ終えます。

 

2.トレーニング中の栄養

 

低血糖は疲労の一因となるので、トレーニング中に低血糖にならないように糖質補給が必要なことがあります。1時間あたり30〜60gの糖質を摂取すると持久運動能力の維持に効果的とされています。4〜8%の糖質を含む飲料を500〜1000ml摂取すると、水分と糖質の両方の必要量が摂れます。

 

3.トレーニング後の栄養

 

@グリコーゲン回復

 

グリコーゲンは毎日のトレーニングで減少するので、翌日のトレーニングまでに回復しておき、エネルギー不足の状態でトレーニングすることのないようにします。グリコーゲンの回復には、糖質を運動後早めに1g/kgを摂り、翌日までの食事で7?10g/kgを摂ります。

 

A筋肉の修復・合成

 

筋肉タンパク質の合成も、運動後早めにタンパク質を補給する方が良く、トレーニング後は食事を早めに摂ることが望ましい。トレーニング後、速やかに食事が摂れない場合は、食事までのつなぎでタンパク質と糖質を摂取します。

 

B水分補給

 

トレーニング後に体重が減少していたら、その減少のほとんどが水分です。

 

 

D−試合時の栄養

 

試合だからといって普段と異なる食品を摂取するよりも、食べ慣れているものの方が良い。食べ慣れていない食品を摂取すると、かえって調子を崩すことにもなりかねません。食事による便秘の予防・改善方法としては、1.食物繊維の豊富な野菜を摂取する。2.水分を多めに摂取する。3.朝食を食べ、腸の蠕動運動を刺激する。などがあります。

 

 

E−外食・中食・サプリメントで気をつけること

 

1.外食・中食

 

外食では小鉢などが付いている定食の方が丼ものなどよりも、栄養のバランスは良好な場合が多い。中食ではおにぎりやカップ麺だけでなく、肉・魚介類や野菜などの惣菜を加えて食品類を増やします。外食や中食は、その特徴を理解し工夫して食べることによって、栄養バランスを整えるようにします。

 

2.サプリメント

 

サプリメントは、1.食事から栄養素が十分に摂れない場合の補給に利用できるものと2.運動能力を高めることが期待される物質を含むものに大別できます。内容成分にドーピング禁止されている成分が含まれていないことを確認することも重要です。

 

 

参考資料:テニス指導教本


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