■テニスの心理学の知識

 

 

 

 

 

1.動機づけ(モチベーション)

 

 

@動機づけの意味と重要性

 

 

私たちがテニスをする理由は、何らかの原動力が働いているからです。原動力は人によって様々ですが「人よりうまくなりたい」など、ある動機によって行動が生起し、適切な目標に推進する一連の過程を動機づけと呼んでいます。

 

動機づけは、運動参加に対する意欲、学習効率の良し悪し、身につけた運動技能や能力の発揮度などの3つに大きく関係しています。

 

適度な強度の動機づけは学習効率やパフォーマンスを高めるので、テニス上達の最も重要な心理的課題と言えます。

 

しかし、一定水準以上に動機づけが強くなるとかえってパフォーマンスが落ちるという、逆効果となる事が知られています。そのことから、指導者は学習の程度に応じた適切な強度の動機づけを継続させることが望まれます。

 

 

A内的動機づけと外的動機づけ

 

 

動機づけには、活動それ自体に価値がおかれて行動が生起する内発的動機と、何らかの目的を得るための手段として行動が生起する外発的動機があります。

 

一般には、外発的動機より内発的動機によって行動が生起する場合のほうが学習効果や運動の連続性が高いと言われています。

 

また外発的動機によって内発的動機が弱められることもあるが、時として外発的動機づけから内発的動機づけに移行する場合もあります。

 

したがって、指導者は外発的動機づけを慎重に使いながら、プレーヤーの内発的動機づけを導く指導ができるように努力しなければなりません。

 

※生起する・・・物事が起こること。

 

 

B動機づけの方法

 

 

1、達成可能な目標や課題を与える

 

目標を設定し、目標に沿って一定の方向づけをするように指導すると良く、この時、個人差に応じて適切な目標設定が必要です。

 

このような現実目標とともに最終目標や中間目標を設け、長期的な見通しを与えることも大切です。また、明確な目標を与え、その重要性を示し、自覚させることが大切と言えます。

 

 

2、結果の知識を与える

 

どこが悪いのか、自分ではわからない時には、常に成績や動作に関する結果の知識を与える(フィードバック)が必要です。この時、結果だけではなく、具体的なアドバイスが加わることでフィードバック効果は倍増します。

 

このような結果の知識は、初心者やこどもには簡潔に、上級者ほど詳しい内容にします。また、与える時期としては動作終了直後が効果的です。

 

 

3、成功経験を与える

 

成功体験は、より難しい課題へと向かわせる動機をもたらし、自信を高める傾向があります。逆に、失敗の体験は成功とは反対に作用する傾向にあります。

 

指導にあたっては、高い水準のパフォーマンスを要求して、失敗を多く経験させないように、成功と失敗のバランスをうまくとることが肝心です。

 

特に、失敗に対する不安や恐れは動機づけを消失させることになることから、こどもや初心者には練習の最初の段階でできる限り多くの成功経験を持たせる必要があります。

 

 

4、褒める

 

成功失敗にかかわらず声をかけることは、動機づけの有効な方法です。褒めることは、その動作・行動を促進する効果をもたらします。

 

一方、失敗の原因を指摘することは大切ですが、くどくどと怒らないようにします。怒られたくないという心理は、不安や緊張を与え動機づけを低下させることになるので注意が必要です。

 

 

5、競争や協同を活用する

 

仲間同士やライバルを決めて競争心をあおり、競争効果を利用する方法です。強調しすぎると敗者が劣等感を持つという逆効果になるので「適度」であることが必要条件です。

 

また、チーム戦などを取り入れて、普段のライバルと協同して試合に臨むことにも挑戦させることもテニスへの動機づけが高まります。

 

6、教えすぎない

 

「何から何まで一切を指導する」ことは、情熱の現れのように見えますが、意欲の根源である自主性や自立性を奪うことにもなるので注意しなければなりません。

 

指導者として、彼らの自主的・創造的な取り組みを“待って”、必要に応じて方向づけをする姿勢が望まれます。

 

 

7、練習にバリエーションをつける

 

テニスの練習は長時間で画一的な練習になりがちですが、練習に飽きさせないように、特に子供達には短時間でバリエーションに富んだ練習内容にする工夫が必要です。 

 

また、長時間、不必要な基本練習を行うのもマンネリ化の原因になるので良くありません。1つの技術がある程度できれば、その技術を用いる状況を発展させて、実戦での応用力を養います。

 

 

8、楽しい雰囲気をつくる

 

楽しさのないスポーツは、もはやスポーツの意味をなしません。プレーヤーの興味・関心を把握したうえで、無理なくその要求を充足してやれるような指導が求められます。居心地のよい雰囲気作りは指導者の重要な役割の1つといえます。

 

 

2.運動技能の学習段階

 

 

@初級(運動の認知段階)

 

 

これから学習しようとする新しい運動技術はどのようなものなのか、何をなすべきなのかを理解する段階です。

 

この段階においては、デモンストレーションや説明を通して、目標とする技術に意識を向けさせることが大切です。最初は遂行条件をやさしくして、少しずつ複雑な動作に発展させる段階的運動学習が効果的です。

 

 

A中級(運動の洗練段階)

 

 

運動の認知段階で得た運動のイメージをどのように遂行するか、実際に身体を動かし、試行錯誤を繰り返しながら洗練し、定着させる段階です。

 

運動の洗練段階での技術練習の目標は、無駄な動きや過剰な緊張を取り除くなど、省エネルギー化のもと、運動動作を洗練し、精密化することです。また、試合の中で学習した運動を試みることも目標のひとつです。

 

 

B上級(運動の自動化段階)

 

 

運動と感覚的な分析が自動的におこなわれるようになる段階です。

 

運動の自動化段階の技術練習では、よりいっそう動作の安定と自動化を図ること、技術を自分で修正できる能力を身につけること、変化する状況に適応できるようにすること、新しい技術や応用技術を開発し、個性を十分に生かすことなどが目標となります。

 

また、技術練習と体力トレーニングの関連性を持たせることも大切です。また、テンポの速いテニスのためのフットワークの獲得には全身持久力をもととした足の筋持久力の向上と瞬発力の向上は欠かすことはできません。

 

 

3.技術練習の基本的前提条件

 

 

@運動表象の形成

 

 

技術練習にきわめて重要な役割を果たすのが運動表象の形成です。運動表象とは、様々な感覚から成り立つ「運動に関する像」のことで、これに基づいて運動がプログラム化され、実行に移されます。

 

そのフィードバック情報によって運動表象が洗練化されるのです。この繰り返しによって、運動表象を形成させることが技術練習の本質です。

 

 

Aレディネス

 

 

レディネスとは、学習が可能な発達的素地を中心に、何らかの課題を遂行することに必要な諸条件が整った準備段階にあることをいいます。

 

遂行すべき課題の違いによってレディネスの成立する時期もその内容も異なり、課題それぞれに最もふさわしい時期、あるいは学習の時期があると考えられています。

 

 

B練習開始時の能力レベルの考慮

 

 

スポーツを初めて経験する者でも、日常生活での運動経験があり、そのうえに技術練習は構築されます。そして運動学習は、常に備わっている体力や調整力のうえに構築されます。

 

よって、運動系経験や体力、調整力などが、将来的に学習効果をあげるのに大きな影響を及ぼすことになるので、指導者は、練習開始時にはプレーヤーが有している能力レベルを正しく判断し、その能力に合った適切な練習をおこなわせる必要があります。

 

 

Cフィードバック

 

 

技術練習は、その課題を達成するまでに、試行と失敗の繰り返しであり、そのたびに自分の動作などの結果を確認し修正をおこなうことが大切です。この結果の確認のことをフィードバックと呼んでいます。

 

これらにはいくつかの分類の仕方がありますが、フィードバックを受容する感覚様式からみると、外的フィードバックと内的フィードバックに分類されます。

 

環境の変化に応じて運動を変えなければならない場合、外的フィードバックが重要となるのに対して、比較的安定した環境で実行する運動があらかじめ決められている場合、内的フィードバックを手がかりとして運動を調整します。

 

動作のフィードバック情報は、指導者によって言語でおこなわれることが一般的です。指導者は練習課題を正確に把握し、プレーヤーの動作との差異を的確に指摘できることはもちろん、プレーヤーにとっての適切な言葉で表現し理解させることが大切で、運動後早く伝えるほど効果的です。

 

 

4.技術練習の原則・法則

 

 

運動技能を効果的にレベルアップさせるには、運動技能の仕組みをよく理解し、工夫して練習をしていかなければなりません。

 

 

@反復練習

 

 

1つの神経―筋の運動回路(技術)を形成するには、習得しようとする技術の運動を何度も繰り返す必要があります。一般的に、練習量は多ければ多いほど技術習得には効果的です。またフィードバック情報をうまく利用することも大切です。

 

 

A全習法と分習法

 

 

いくつかの技術が連なって全体の運動が成り立っている場合や、運動が複雑で比較的遂行時間が長く難易度が高い一連の技術練習の場合は、はじめから運動全体を練習するよりも、一連の運動技術をそれぞれの技術に分割して部分ごとに練習すると、より早く運動技術全体を習得することができます。

 

しかし、異なった動作を学習してしまう危険もあるので、常に運動技術全体を考慮して指導することが大切です。

 

 

B集中練習と分散練習

 

 

同じ技術を一度に集中的におこなう練習を集中練習、休憩を挟んで何回かに分けておこなう練習を分散練習といいます。

 

集中練習は、時間の節約にはなりますが、飽きやすく動機づけの維持が難しく、疲労や傷害を招きやすいのです。分散練習は、練習中の効果が目に見え動機づけが維持しやすく、疲労が少なく傷害になりにくいのです。指導者はこれらの長所、短所を理解し計画を立てることが求められます。

 

 

Cブロック練習、ランダム練習、シリアル練習

 

 

複数の技術を練習する場合、練習順序からみると大きく分けて3つの方法があります。

 

1つ目は、1つの技術を繰り返し練習し、その技術練習が終了してから次の練習に移るブロック練習です。

 

2つ目は、いろいろな技術練習をランダムに配列、次々に別の課題を練習していくランダム練習です。

 

3つ目は、一定の順序で複数の技術を繰り返し練習するシリアル練習です。

 

一般に、学習導入段階はブロック練習が効果的であるが、その後はすぐにランダム練習やシリアル練習に切り替えたほうが、学習効果が保持されます。

 

 

D過剰学習(オーバーラーニング)

 

 

習得しようとする技術課題を一度できた後もさらに続けて練習を繰り返すことを過剰学習といいます。

 

練習でなんとかできた程度の技術が試合でうまくいかないのは、過剰学習の不足による技術の未定着が原因と考えられます。

 

 

E転移

 

 

既習の運動経験が技術習得に有効に働くことを転移といいます。新しいものの習得促進する場合を正の転移、逆に抑制するものを負の転移といいます。

 

転移はあくまで習得しようとする技術とは別物であり、導入期を過ぎると効果は小さくなります。

 

 

Fメンタルプラクティスとイメージトレーニング

 

 

練習と並行して課題を心のなかで繰り返し覚えさせる精神活動をメンタルプラクティス、イメージトレーニングなどと呼びます。 身体トレーニングと併用することで効率的に練習することが可能となります。

 

 

Gプラトー(高原状態)、スランプ(低迷状態)

 

 

練習効果の向上には、効果の横ばい期がみられることが多く、これをプラトーと呼んでいます。プラトーの原因としては、意欲低下、練習方法が適切でない、良くない癖ができたなどがあげられます。

 

スランプは、技術的欠陥、慢性疲労、けが、競技意欲の喪失、焦り、競技環境の変化、自己の能力の過大評価などが考えられます。多くの場合、心・技・体のバランスの長期的崩れに原因があるので、長期にわたってコンディショニングを実施する必要があります。

 

 

参考資料:テニス指導教本T

テニスの心理学の知識と知恵

 
■テニスの心理学の知識
 

 

 
@―動機づけ(モチベーション)

 

1.動機づけの意味と重要性

 

「人よりも上手くなりたい」などのある動機によって行動が生起し、適切な目標へと方向づけ、持続的に推進する一連の過程を動機づけと呼んでいます。

 

この動機づけは意欲を喚起するばかりではなく、意欲を維持し、さらには意欲を強化します。適切な強度の動機づけは学習効率やパフォーマンスを高めることから、テニスを上達させるための最も重要な心理的課題と言えます。しかし、一定水準以上に動機づけが強くなると目標の達成に重点を置きすぎるため、能力以上の成果を求めてしまい、かえって逆効果になります。

 

2.内発的動機づけと外発的動機づけ

 

動機づけには、2つの考え方があり、活動それ自体に価値がおかれて行動が生起する場合で、これを内発的動機づけといいます。(例:テニスが楽しくて、ずっと打っていたい)

 

また、何らかの目的(承認や報酬)を得るための手段として行動が生起する場合で、これを外初的動機づけといいます。(例:試合に勝てばゲームを買ってもらえる)

 

一般に、外発的動機づけよりも内発的動機づけによって行動が生起する場合の方が、学習効果が高く、運動の継続性も高い。動機づけの連続性や、上達や発達に応じた動機づけの変化にも積極的に注意を向けることが指導者に求められます。

 

したがって、指導者には、外発的動機づけの「アメとムチ」を慎重に使い分けながら、選手や生徒の本質的な内発的動機づけを導き、そのプロセスや個人差(パーソナリティなど)を考慮した指導ができるよう努力しなければなりません。

 

3.動機づけの方法

 

@目標、課題を与える
…目標は具体的なほど効果的です。
(選手の能力にあった目標設定が大切、達成の可能性が50%程度の目標が一番頑張れる)
A結果の知識を与える
…単なる結果だけでなく具体的なアドバイスが加わると、フィードバックの効果は倍増します。
(選手の気づかない部分を見つけだし、的確にアドバイスすることが上達させるポイント)
B成功経験を与える
…結果を成功とみなすか失敗とみなすかは個人的な目標や期待の高さ、つまり要求水準が達成されたかどうかによって決まります。
Cほめる
…「ほめる」ことは動作、行動を促進する効果をもたらします。
D競争させる
…ライバルを決めて競争心をあおります。
E教え過ぎない
…何から何までの一切を指導してしまうと意欲の根源である自主性や自立性を奪うことにもなるので注意しなければなりません。
F練習にバリエーションをつける
…短時間でバリエーションに富んだ練習内容にすることによって練習が単調にならず、意欲の水準を高めることができます。

G楽しい雰囲気をつくる
…居心地の良い雰囲気づくりが重要な役割です。

 

 

A―運動技能の学習段階

 

1.初級(運動の認知段階)

 

これから学習しようとする新しい運動技術はどのようなものなのか、また何をなすべきなのかを理解する段階で、この段階では動作はぎこちなく、不正確であり、技術の大ざっぱな協調がなされ、試行錯誤を繰り返します。

 

この段階においては、まず示範や説明を通して、目標とする技術に意識を向けさせることが大切です。連携動作の習得には、最初は遂行条件を優しくして、少しずつ複雑な動作に発展させる段階的運動学習が効果的です。

 

2.中級(運動の洗練段階)

 

運動の認知段階で得た運動(技術)のイメージが洗練され定着する段階です。この段階では、認知的要素の果たす役割が相対的に減り、ボールなどの環境に対する予測能力の発達に伴い、動作は安定化し、省エネルギー化が進みます。

 

この段階での目標は、無駄な動きや過剰な緊張を取り除くなど、運動動作を洗練し、精密化することです。不確定要素である相手の動き、様々な妨害に対しても、安定して技術が発揮できるようにすることも求められます。

 

運動初期の段階のやさしい課題から、徐々に条件を難しくします。この段階における安定化は単純なものでなく、動揺と安定が交互に繰り返される中で漸進的に進行するのです。

 

3.上級(運動の自動化段階)

 

運動と感覚的な分析が自動的に行われるようになる段階です。状況把握などの戦術的側面に注意を向けることが可能となります。いわゆる、「からだでおぼえた」状態となります。

 

この段階では、よりいっそう動作の安定と自動化を図ること,明らかなストレス状況下で技術を定着させること,新しい技術や新しい応用技術を開発し、個性を十分に生かすことなどが目標となります。

 

また、技術練習と体力トレーニングの関連性を持たせることも大切です。技術を試合の中で試したり、試合日程に合わせてピーキングできるようにコンディションを整える指導をすることも大切です。

 

 

B―技術練習の基本的前提条件

 

1.運動表象の形成

 

運動表象とは、さまざまな感覚(視覚、聴覚、運動覚など)から成り立つ“運動に関する像”のことで、選手自身の運動経験も含めて、運動経過(対象となる技術)に関するあらゆる情報が要約されています。

 

2.レディネス

 

技術を行い得る準備状況(レディネス)や動機づけなど学習者の諸条件が整っていることが前提となります。レディネスとは、学習が可能な発達的素地を中心に何らかの課題を遂行することに必要な諸条件が整った準備段階にあることをいいます。

 

レディネスの規定要因としては、情緒的側面や社会的側面等も考慮に入れた発達水準、過去の学習経験の内容、指導の方法や材料などがあげられ、これらは密接に関連し合っています。

 

3.練習開始時の能力レベルの考慮

 

運動経験や体力、そして調整力などの要素が将来的に学習効果をあげるのに大きな影響を及ぼすことになります。したがって、指導者は、練習開始時には選手や生徒が有している能力レベルを正しく判断し、その能力レベルにあった適切な練習を行わせる必要があります。

 

4.フィードバック

 

技術練習は、その課題を達成するまでは、試行と失敗の繰り返しであり、そのたびに自分の動作などの結果を確認し、修正を行うことが大切です。

 

この結果の確認のことをフィードバックと呼んでいます。外的フィードバック(資格や聴覚などの外受容器へ入るフィードバック)と内的フィードバック(筋運動感覚や平衡感覚など内受容器へ入るフィードバック)に分類することもできます。

 

また、フィードバックの源がどこにあるかによって、内在的フィードバック(運動遂行中や遂行後の感覚刺激から生じたフィードバック)と付加的フィードバック(コーチの言語情報やVTR映像、写真など学習の目的に応じて特別に付加された情報)にも分類できます。

 

指導者は練習課題を正確に把握し、選手の動作との差異を的確に指摘できることはもちろん、選手にとって適切な言葉で表現し理解させることが大切で、運動後早く伝えるほど効果的です。

 

練習の初期段階では、動作に関するフィードバック効果はとても大きく、練習が進むにしたがって、その動作に関するフィードバックは漸減します。

 

 

C―技術練習の原則・方法

 

ただやみくもに練習するだけでは、運動技能を効果的にレベルアップすることは期待できません。運動技能のしくみをよく理解し、工夫して練習していかなければならないのです。

 

1.反復練習

 

一つの神経一筋の運動回路(技術)を形成するには、習得しようとする技術の運動をなんども繰り返し行う必要があります。

 

2.全習法と分習法

 

始めから運動全体を練習する(全習法)よりも、一連の運動技術をそれぞれの技術に分割して部分ごとに練習(分習法)と、より早く運動技術全体を習得することができます。

 

3.集中練習と分散練習

 

練習中のパフォーマンスは、分散練習の場合、回数に応じて目に見えて向上していくが、集中練習の場合はある程度で向上は見られなくなり(高原状態:プラトー)分散練習ほどパフォーマンスは向上しません。

 

しかし、集中練習では、練習後休息を挟んで疲労を取り、パフォーマンステストを実施してみると、分散練習と同等のパフォーマンスまで向上するという、技術練習特有のレミニッセンス効果があることが知られています。

 

4.ブロック練習、ランダム練習、シリアル練習

 

練習順序から見ると大きく分けて3つの方法があります。

 

一つ目は、一つの技術を連続して繰り返し練習し、その技術練習が終了してから次の練習課題に移るブロック練習です。

 

二つ目は、いろいろな技術練習をランダム(無作為)に配列し、次々に別の課題を練習していくランダム練習です。

 

三つ目は、一定の順序で複数の技術を繰り返し練習するシリアル練習です。最初にブロック練習を行い、ある程度の運動プログラムの形成が見られるようになったら、なるべく早くランダム練習やシリアル練習に切り替えるべきです。

 

5.過剰学習(オーバーラーニング)

 

習得しようとする技術課題が一度できたら、そこで休止せず、さらに続けて練習を繰り返すと学習効果の保持がよいことが知られています。これらを過剰学習(オーバーラーニング)といい、これが技術の固定化・自動化を確かなものにします。

 

6.転移

 

すでに習得した運動パターンや他の種目経験で獲得した技術などが、これから練習し身につけようとする技術に類似している場合などは、それら既習の運動経験が技術練習に有効に働く場合があります。これを転移といいます。

 

個人内における技術の転移もあり、人の体軸を境にした左右間の転移現象を両側性転移と呼んでいます。転移はあくまで類似の運動経験を導入として使うものであり、習得しようとする技術とは最終的には別物で、導入期をすぎると効果は小さくなります。

 

7.メンタルプラクティス(イメージトレーニング)

 

技術練習の内容の全体像を選手に伝えたら、実際に身体的な練習を行うとともに、課題を心の中で繰り返し覚えさせる精神的活動を並行して行うと、身体的学習効果をさらに強化させることができます。

 

この精神的活動をメンタルプラクティス、メンタルリハーサル、あるいはイメージトレーニングなどと呼びます。また、メンタルプラクティスは、技術練習のみならず、試合中のストレスや不安などを解消するなど、精神面の強化にも応用されます。

 

8.プラトー(高原状態)、スランプ(低迷状態)

 

練習効果の向上には、効果の横ばい期が見られることが多く、これを学習の高原状態(プラトー)と呼びます。プラトーの原因としては、練習意欲が低下している、良くない動きが癖になっているなどがあげられます。

 

スランプは、けが、焦り、自己の能力の過大評価など様々な要因が考えられるので、原因を探り、的確に対処しなければなりません。

 

 

参考資料:テニス指導教本

 

このテキストの心理学は「運動心理学」という分野を説明しています。運動を始めるにあたっての動機づけや運動の発達段階によってどのような精神状態が起こっているかなど、運動を進めて行く時の心理状態を解説しています。特に、技術練習については運動技術のしくみから理解して、どのような練習がなぜ効果的なのかを勉強していきます。


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