求められる指導者像の知識と知恵

 
■求められる指導者像の知識

 

 

 


 
 
■テニス指導者に必要な資質とは

 
 
ニスは世界で最も普及したスポーツの1つです。老若男女を問わず楽しめるスポーツとして発展しましたが、プレイヤーそれぞれの目標は千差万別です。
 
それに合わせて、テニスは世界的にプロコーチ、スクールコーチ、プライベートコーチなどその指導過程が一つの産業として確立しているスポーツでもあります。
 
プロコーチはプロコーチでスクールコーチはスクールコーチでそれぞれがそれぞれの立場や理念、指導方法などを共有しているのが現状です。それぞれの指導対象のニーズに対応していくのはもちろんですが、指導者として必要な資質はどのコーチでも大きく変わることはありません。
 
 
■指導者の資質

 
1常に学び続ける向上心
 
2豊富な知識
 
3鋭い洞察力、正確、的確な状況判断
 
4穀然とした態度
 
5指導するすべての人に対する敬意
 
6指導する対象者から尊敬される立ち振る舞い(言葉遣い、服装も含む
 
7信念を持った指導

 


これらの資質を持った優れた指導者が、どんな競技者に対しても大きな喜びとテニスの素晴らしさを伝えることができるのです。そして、優れた指導者によって指導されたプレイヤーは、後に優れた指導者となり継承されていきます1人の優れた指導者が後にたくさんの指導者を輩出することにより、テニスが普及し活性化していくのです。

 

 

スポーツに限らず、最初にどのような指導者と出会うかが、以後、その事柄とその人の関わり合い方を大いに左右するものであり、このような資質のある指導者に出会えた人は幸せです。


 

 

■指導者に必要な能力
 
 
@指導プログラムの構成能力
 
 
…競技力を向上させるためには、技術を十分に身につけ熟練させることが不可欠です。練習の成果が実力向上となるためには指導内容のバランスを考え、指導者はレベルに合わせた目標設定、指導計画を立案します。このプログラム作成には指導者の経験と能力が必要不可欠なのです。
 
 
A伝達能力
 
 
…テニス技術あるいは戦術などを選手に指導する場合に、正確に内容を伝達することができます。

 

1)言語による指導…競技力を向上させるには、技術を身につけ、熟練させることができる。

 
2)デモンストレーション…デモンストレーションを行う際に選手の見る位置や方向も十分に考慮する。

 
3)視聴覚による指導…技術を伝達する補助的な方法としてVTR、映画などの視聴覚機材を用いるかで評価される。

 
4)運動感覚の矯正による指導…選手の手、足や体全体を指導者が積極的に動かすことによって、正しいフォームを学習させるものである。
 
 
B評価分析能力
 
 
…指導者は、選手の技術レベルが進歩しているか判断する何らかの方法を持たなければなりません。評価は指導場面において欠くことのできないものであり、選手の進歩度、困難度、最終的達成度などを知るうえで役立つものです。

 
 
指導者は技術テスト法、VTR撮影、知識テストなどのいくつかの方法を用いるべきです。選手も指導者とともに試合内容や、練習目標、技術面などを考えることが必要です。
 
 
選手を把握するということで、体力、健康面、学業的要素、心理面、生活態度まで広範囲にわたって記録をつけることも役立ちます。
 
 
指導者自身も職業的知識と行動を分析し指導法の検討をすることも必要です。
 
 
■良い指導者とは
 
 
指導者に必要なのは「コーチング哲学」です。コーチング哲学とは、指導に関するものの見方考え方、行動の指針となるものを持つことです。コーチとしてだけではなく一人の人間としての哲学を考えてください。
 

 
それにはまず、なぜ自分がコーチをしているのか?自分は良いコーチなのか?など自分自身に問いかけてみます。自分を客観視することでコーチとしての自覚を促します。
 
 
コーチとして認められるには必要なサポートが3つあります。1つ目はプレイヤーが一人の人間として成長するサポートをすること。2つ目はプレイヤーが勝利を掴むサポートをすること。3つ目はプレイヤーが楽しめるようにサポートすることです。
 
 
良い指導者には、この3つのサポートすべて考慮しますが、コーチの哲学によって指導スタイルが分かれます。具体的には下記の3つになります。
 

 

 

@権威型(管理・指示命令型)は、勝利至上主義になりやすく、情熱的ではあるがコーチがすべての決定権を持って、プレイヤーの成長を無視してしまいます。
 
 
A協力型(協調および協同型)は、まずは競技者であること(フェアプレーやスポーツマンシップをもつこと)、勝利は次の事として捉え、プレイヤーの成長を中心にしたバランスの取れた見方で信頼関係をつくります。
 
 
B放任型(自由放任型)は、プレイヤーにはすべて自主的に行動させるが、目的もなく甘やかしてしまい、練習などもマンネリ化しやすくなります。
 
 
指導者は、様々なプレイヤーの違いや場面の違いに応じてコーチングスタイルを変化させますが、アスリートを目指す選手には協力型コーチングスタイルを薦めます。
 
 
また、良い指導者はティーチングとコーチングを上手く使いこなします。ティーチングとコーチングの違いは、指導者が持っている知識を教えるか、選手が持っている知識を引き出すかの違いともいえます。テニスの指導では、初心者から初級程度の経験の浅い場合などにティーチングを行い、中級者以上になればコーチングで能力を引き出すことが大切です。
 
 
グループレッスンなどでは、生徒全員に同時に説明や指示が必要になるのでティーチング方式が有効です。プライベートレッスンや少人数に場合などはコミュニケーションもしっかりとれるのでコーチング方式が活用できます。指導者は状況に応じてティーチングとコーチングを使い分けることが必要なのです。

 
 
■指導者の役割・使命(やりがい)・要素とは
 
 
指導者(コーチ)にはたくさんの役割があります。技術指導をするインストラクターの役割、新しい知識や考え方を伝える先生としての役割、トレーニングや身体のことをみるトレーナ―の役割、人間性を高める教育者の役割、分析・評価・結論をまとめる科学者の役割など、さまざまな顔を持っていなければならないのです。
 
 
テニス指導者の使命は、国際的で老若男女誰もが楽しめるテニスというスポーツを通じて、さまざまなプレイヤーに出会い、その進歩や成長をサポートして喜びを共有できるという大変やりがいのある仕事にかかわっている。そのことはテニスという分野での、スポーツ文化の歴史を発展させるという事業の一翼を担っているといえます。
 
 
指導者に必要な要素としては、これまでの経験主義・主観主義(これまでの経験や自分の考えだけ)に陥らず技術の進歩や指導法の変遷、医科学やテクノロジーの発展などに関心と興味を持っていること。他の競技の指導者の話を聞いたり研修会に参加する。国や地方行政、テニス施設やテニス人口の推移に関心がある。環境問題や女性の社会進出、スポーツフォアオール実践の立場から、障害を持った人たちにテニスの扉を開き、テニスの楽しみを分かち合っているなどがあります。

 

 

■テニス指導の必要性と課題

 

 

「なぜ、テニス指導が必要なのか?」 テニスは複雑な技術体系を持っているため、独りよがりの練習などでは故障を起こすことがあります。それを故障を起こさず、技術を効率よく習得するために必要なのです。

 

 

さらに、テニスがプレーできるようになると、テニス観戦や大会を運営するなど、テニスにおける活動を起こすことが出来るようになります。「テニスを個人にとっては好ましいもの、社会にとっては望ましいもの」として学習させること全体がまさにテニス指導になるのです。

 

 

スポーツを文化と捉えると、この場合の文化とは、生活をより豊かにするために考えられた行動の仕方や考え方であり、人々の中で共有され、伝承されてきた様式です。その中の一つにテニスが存在しているのです。

 

 

テニスの文化的要素は、テニス観、技術・戦術、規範(ルールやマナー)、物的用具からなります。この文化的要素が具体的な指導内容となり、時代が変化してもテニスの本質が変わらないように意識していかなければなりません。

 

 

参考資料:テニス指導教本 テニス指導教本T Advanced Coaches Manual プレー・テニス教本

 

 

■求められる指導者像の知恵

 

 

スポーツ指導者、テニスコーチ、部活顧問など指導に係わる人たちに「指導者の7つの資質」があります。学生にこの話をするとテニスコーチとはこんなに大変な職業と思われてしまいます。しかし、実際は、常に学び続ける向上心があれば大丈夫と答えています。

 

 

豊富な知識とか的確な状況判断などはこれから身につけていくもので、すぐに出来るものではないからです。ここでは、7つの資質を学ぶことで、これから成長していく中で理想とされる項目として自分の中に持ち続けてほしいものと考えています。

 

 

「指導スタイル」についても、自分がかかわる人により使い分けが必要になりますので、どれが良くてどれが悪いという評価はありません。これまでテニスコーチの経験から思うことは、すべてやる(使ってみる)ことです。やってみることで加減が分かるのです。そのことが自分の経験となり正しい判断や、信念を持った指導が出来る基本になります。

 

 

コーチを目指す人はこのサイトに書いてある知識の部分をしっかり学んでください。知識がなければどのようなことを経験してどのような判断が必要なのかも分からないからです。しかし、学んだことは絶対ではないことも理解して下さい。数年後には新しい理論が出ているかもしれません。これから情報の波はどんどん押し寄せてきます。しかし、その中で取捨選択する能力も重要なのです。

 

 

テニスコーチになりたい、テニスコーチに悩んでる人たちは自分の将来をもう一度、客観的に見直してください。企業に勤め安定を求めるのか?ジュニアを育てるやりがいを求めるのか?いろいろな思いがあるはずです。しかし、やりがいだけでは飯は食えないのです。この業界全体を発展させて行かなければ将来は明るくないかもしれないのです。

 

 

これからのスポーツ界は社会的にも期待される反面、コンプライアンスも厳しく評価されていきます。自己研鑽という言葉は難しく感じると思いますが、指導者の質の向上が課題であることはスポーツ界全体の共通認識です。その中で活躍できる力をつけましょう。あなたが未来を創っていくのです。
 


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