テニスの特徴と特性の知識と知恵


 
■テニスの特徴と特性の知識

 

 

 


 
■テニスの特徴とは
 
 
ニスは球技種目の1つであり、ネット型スポーツに分類されています。また、ボールだけでなくラケットという道具を使い、いろいろなテクニックや戦術があり「世界で3番目に難しいスポーツ」といわれることもあります。(1番はヨット競技、2番は馬術競技)
 
 
また、生涯スポーツ種目とし健康増進体力増強の観点からも高い評価を受けています。男女が組んで出場できるミックスダブルス種目の公認大会があるのもテニスだけになります。少人数でも楽しめ、体力レベルや技術レベルに合わせて年齢別大会や初級者大会などもあります。ネットを挟むので相手と接触する危険もありません。
 
 
対人的スポーツであるテニスは、相手との駆け引き状況判断が求められ、相手を観察して予測を立て戦術を決定するな知力をフルに活用します。試合中は団体戦以外ではアドバイスも受けれないので自分で対策を考える必要があります。
 
 
■テニスの競技特性とは
 

 
ニスの試合におけるプレー時間を見るとテニスの競技特性が見えてきます。試合時間が約2時間の場合はプレー時間(プレーとして動いている時間)が約23分、つまり、試合時間の80%は休息しているということです。
 
 
1ポイント平均時間は6〜8秒とい無酸素のスポーツといえます。しかし、1ポイントの最長時間は20秒〜30秒もあ解糖系の領域も利用します。さらに、テニスは勝ち続ければ毎日試合がありますので、疲労回復能力として有酸素系の能力も必要になるのです。
 
 
近年では道具の進化による高速化が進み、瞬発力や反応時間の短縮が求められています。テニス指導者はこのような競技特性を理解して指導内容、指導プランを作り上げる必要があります。
 
 

■テニスの技術とスキル特性とは

 

 

スポーツにおける技術とは、特定の課題(運動課題)を合理的に解決するために考案された運動の行い方のことです。その技術を練習によって習得し、試合中の状況に応じてその運動を調整しながら実行する能力のことをスキル(スポーツ達成力)と呼んでいます。

 

 

このスキルには3つの要素があり、技術ほかに、体力精神力が深く関わっていますスキルを効果的高めるためには、技術を正しく理解して身につけさせ、そしてスキルに関連した体力を高め、さらに意欲、集中力などの精神力を養うことが必要になります。このようにしてスキルを高めることが、最終的にはパフォーマンスの向上を導くことになるのです。

 

 

テニスは、技術練習に多くの時間を割く傾向があります。しかし、試合の後半までプレーの質を落とさないようにするには有酸素的な持久力、無酸素的な持久力をつけることが必要で、さらに緊迫した状況での精神的な強さ(メンタルタフネス)も必要になり、テニスのパフォーマンスは技術だけではなく、これらの総合的な能力によって左右されるのです。

 

 

また、これらの3要素は年齢に配慮して考える必要があり、低年齢では技術的要素がウエイトを占めるものの、年齢が上がるにつれて体力的また精神的要素にウエイトを置かなければならなくなります。したがって指導者は、それぞれの特性を理解し、実際に効果的に指導できることが大切です。

 

 

■オープンスキルとクローズドスキルとは

 

 

スポーツのスキルを、パフォーマンスにかかわる外的環境がどの程度安定しているかどうかという観点から分類すると、オープンスキル(開放型スキル)とクローズドスキル(閉鎖型スキル)に大別することができます。

 

 

[自分の技術を使う時に相手からの影響がある(邪魔される)のがオープンスキルで相手からの影響がないか、もしくは相手がいないのがクローズドスキル]ともいえます

 

 

□オープンスキル
…外的環境が絶えず変化する状況で発揮されるスキルのことである。状況を判断するための知覚的な認識が重要となる。

 

 

オープンスキル型のスポーツ競技は、サッカー・バスケット・バレーボール・テニス・剣道・柔道などすべての対人型競技で視覚や聴覚、予測や判断力が重要なスポーツといえます。

 

 

□クローズドスキル
…外的環境があまり変化しない状況で発揮されるスキルのことである。身体についての感覚的な認識が重要となる。

 

 

クローズスキル型のスポーツ競技は、器械体操・陸上競技・水泳・スキー・スケートなど、ほとんど相手と交わらない記録競技や得点競技が中心で、身体の動きの感覚が重要なスポーツといえます。

 

 

初心者の段階などではドリル形式の練習が多く取り入れられます。周りに邪魔されない環境で行うことで、身体の動きに集中することが容易にできるので、基礎技術を習得する時にはクローズドスキル型の練習が有効とされています。

 

 

しかし、ゲームでは「どう打つか」よりも、「どこへ、どのような効果的なボールを打つか」が重要となります。テニスコーチとしては、オープンスキルの練習を工夫していくことで選手のパフォーマンスを向上させることができます。
 
 
■オープンスキル上達のための練習の考え方とは

 

 

オープンスキル上達のためには、(1)知覚 → (2)意思決定 → (3)実行 → (4)評価 → (5)フィードバックの5つの過程を順番に考えていかなければなりません。

 

 

1.知覚

 

 

テニスでは、飛んでくるボールを見分け、また現在のポイントの状況、そして相手の位置なども認知する必要があります。予測能力をフルに発揮することも大切で、予測は、相手の技術的な側面と戦術的な側面から行うべきです。

 

 

●相手が行おうとすることの予測
相手の技術的、戦術的な特性(癖)などを十分に理解していることも重要な要素です。ゲームのいろいろな状況において、相手のあまりしないこと、またできないことなども予測する必要があります。

 

 

●予測の4つのタイプ

 

 

1)知覚的予測:視覚的にボールがどこに落ちるのか、ボールの回転、スピード、高さ、コートサーフェスなどからボールの弾道をインパクト後にすぐに予測します。ボールを判断する時には、インパクト前の相手の状況が加味されることも多いのです。

 

2)技術的予測:相手プレーヤーが総合的には、どのようなテニスを行うのか。また、どのショットが得意か、あるいは苦手かを相手のグリップやポジションを参考に予測します。

 

3)戦術的予測:過去のプレーパターンの分析を行い、どのような戦術を用いるかを予測します。

 

4)ポジション的予測:ショットの可能性を判断し、それぞれに対応したポジションをとります。

 

 

2.意思決定

 

 

状況を知覚すると、次に「何をするのか」、どこにどのようなボールを打のかを決定する。これには現在自分がどのようなゲーム状況に置かれているのか、コンディションやパフォーマンス発揮程度をを十分に把握していなければなりません。

 

 

3.実行

 

 

意思決定すると次の段階として実行、すなわちストロークを打つことになります。基礎技術のストロークが正確に行えれば、それがボールコントロールにもつながっていきます。バランスのとれた動きで、打たれたボールが有効性のあるものでなければなりません。

 

 

4.評価

 

 

打ったボールに対して、よかった点と悪かった点を考え、さらに、知覚・意思決定・実行の3段階でミスがなかったかを考えます。コーチはそれらを視覚的(デモンストレーション)、聴覚的(説明)、運動的感覚的(身体で覚えさせる)に選手に伝えることが大切である。

 

 

5.フィードバック

 

フィードバックとは、「自分の行動の結果を見て、行動を調整すること」。自分自身で行う場合と指導者に行なってもらう場合の2つがあります。

 

 

1.〜5.の過程を常に念頭におきながら、指導者は、的確にプレーヤーの指導を行うことが大切です。指導者はプレーヤーのスキルレベルに応じて、目標やプレーの状況を設定して、その中で有効な具体例を課題としてプレーヤーに説明し、実践させていき、どこがいいのか、悪いのかを指示していくことでオープンスキル的な指導実践の場として活用することができるのです。

 

 

プレーヤー自身が判断し、実行していく場を多く設定することによって、このオープンスキルが向上していくのです。

 

 

■5つのゲーム状況とは

 

 

テニスのプレーにおいては、以下の5つのゲーム状況があります。

 

 

1.サーブをするとき
2.サーブを返すとき(リターン)
3.2人ともバックコートにいるとき
4.プレーヤーがネットにつこうとしているか、またはすでにネットにいるとき
5.相手がネットにつこうとしているか、またはすでにネットにいるとき

 

 

指導者は、この5つの状況を常に考えながら、より効果的な練習メニューを作成していくことが重要です。このような戦術的・技術的な面からの指導がオープンスキルの能力が効果的に向上すると考えられます。

 

 

参考資料:テニス指導教本 テニス指導教本T

 

 

■テニスの特徴と特性の知恵
 

 

 

この、テニスの特徴と特性を学んだことで何が変わるのか?それは、テニスというスポーツがいかに素晴らしいか、いかに幅と深さのあるスポーツかということを教えてくれます。

 

 

テニスコーチとして、「テニスの良さを教えてください」と質問されたときにどのように答えますか?2人いればプレーできる気軽さや、トーナメントに出ればたくさんの人との出会いもあります。もちろん1人でもサーブや壁打ちなどでプレーすることもできます。

 

 

また、ネットを挟むことで相手と接触しないなどの安全なスポーツでもあり、年齢や体力に合わせたプレーもできることです。さらに生涯スポーツとして認められているのは、テニスの運動強度が体力増強には最適な強度だということです。

 

 

その他にも対人スポーツなので、すごく頭を使うことも必要です。相手との駆け引きや状況判断が重要なスポーツでもあり、ゲーム性が高い知力を出し合って戦えるスポーツともいえるのです。

 

 

年齢、性別、国籍が違っても、人と人が心技体すべてを出し合ってプレーできる素晴らしいスポーツなのです。世界でテニスが認められているのも、フィジカル、テクニックはもちろんですが、この知力を駆使して闘う姿に、人間力の高さに魅了されているのではないでしょうか。

 

 

テニスコーチは、このスポーツをこれからも繁栄させるためには、見る人を感動させるプレーができる選手を育てなければならないということです。テクニックだけではなく、人間としての魅力を感じさせるプレイヤーが必要です。

 

 

テニスはオープンスキルのスポーツという特性を持っています。しかし、現実には、クローズドスキル系のドリルばかりやっているところもあります。もちろん、基礎技術をつけるには必要な練習ではありますが、ボールが打てるようになればオープンスキルへ導くことがコーチの役割です。

 

 

現場では、オープンスキルを教えることが課題といえます。オープンスキルを上達させるには、知覚→意思決定→実行→評価→フィードバックの5つの過程を順番に考えていかなければならないのですが、これをそのまま使っても効果は期待できません。

 

 

問題なのは知覚と意思決定の使い方なのです。知覚として、予測の4つのタイプがありますが、4つそれぞれは必要な予測です。しかし、プレイヤーに予測を教えるとたくさん予測してくれますが、意思決定が出来ないのです。

 

 

予測が増えるということは良くもあり、悪くもあるのです。最初は予測できないと困るのですが、その予測の数がだんだん減っていかなければならないのです。つまり、予測の精度が上がるということは、余分な予測を出来るだけ削るという重要な作業が必要なのです。予測が早く精度が上がることで、意思決定が素早く正確になります。

 

 

コートで迷っている選手は予測に振り回されているのかもしれません。コーチは、選手としっかり話し合い、予測に対しての整理ができているのかを確認しながら解決策を見つけます。

 


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