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レディネス的指導

 

レディネスとは心理学の用語でテニス教本では教育準備性と訳されています。コーチはレディネスを理解して最大の効果を得られる指導を考えて行うことが大切です。

 

 

教育や学習が行われるためには、対象となる学習者にある程度の素地が必要とされる。心身の機能が、ある行動や知識を習得できる段階まで発達し、学ぶ準備が整う状態をレディネスという。このレディネスが形成されるのを待ってから教育・学習を行うことにより効果が期待される。 レディネスがない状態で教育・学習を行うと、効率が悪いばかりか、マイナス効果を及ぼす場合もある。 指導者は、早過ぎず遅過ぎず、学習に適切な時期を見極めることが大切。

 

ナビゲート ビジネス基本用語集より引用

 

 

レディネスはもともと子供の学習を研究したものなので、特にジュニア指導のコーチングにおける本質的要素が入っています。コーチングで、いつ、どんな、どれくらいの練習をするのかを決めることは学習の成果に大きな影響を与えます。

 

 

今ではもう常識の範囲になっていると思いますが、ジュニア期の指導には「スキャモンの発育曲線」を元に練習が組まれています。ここでは詳しくは説明しませんが、二十歳のレベルを100%と考えて各体組織の発育の特徴と発達の時期をあわせて練習を組んでいきます。

 

 

つまり、発育曲線が上がり始めている時にレディネスが整い、さらに曲線のピークで臨界期(最も伸びる時期)を迎え学習の効果が期待されます。これは発育曲線の上がる前には効果がないという「熟成優位説」に基づき、身体的発達には欠かせない考え方です。

 

 

少し内容に触れますが、小学校低中学年は神経系(コーディネーション・技術の向上)、小学校高学年から中学生は心肺機能・筋持久力系(スタミナ・粘り強さ)、中学後期から骨格筋・生殖器系(筋力・瞬発力)という発達が起こります。

 

 

指導者はこれらをベースにいつ、どんな、どれくらいを決めていきます。しかし、ここで気をつけていただきたいのは、精神的レディネスを忘れてはならないということです。自我を確立して、自分の行動に責任をもてるようになるまではテニス偏重や勝利だけを求めないことです。

 

 

よくある話で、テニスが上手な子供に勝利だけを目的に練習をさせて、小さいころは勝っていたが、高校になると名前を聞かなくなるケースがあります。特に小学生のころにトップに登り詰めた選手に多くみられます。これらは勝利至上主義の犠牲になったといっても過言ではありません。

 

 

自我が育っていない子供に勝ち負けだけを追及させると勝てば傲慢になり負けると罪悪感を持つようになります。自分は、テニスを楽しみたい相手と仲良くなりたいなどの気持ちがぶつかり心のバランスを失ってしまいます。

 

 

その結果、自分が自分である(自我の確立)と判断が出来るようになると罪悪感を持ったテニスなどに興味が無くなりバーンアウトしてしまう選手が出てくるのです。

 

 

いかに、指導者の生徒に対する(特に子供に関して)レディネスを見極める力が重要かが分かります。当然、個人差が大きい時期でもあり、すべての子供にあてはまる訳ではありませんが、一人一人の成長を観察して適切な対処を心がけることです。


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