経過分析から機能分析への移行

 

テニスコーチになった頃は、スクールで初心者がラリーをできるようになるには1年以上かかると言われていました。しかし、現在は初心者の方でも1時間ほどの指導でショートラリーなら100回程度続けるさせる事が出来るコーチが増えています。

 

 

これは指導法が変わってきたことに気づき、いち早く取り組んだ結果です。結論から言うと、「経過分析」から「機能分析」への移行です。以前から熱心なコーチはテニスにおける動作解析を行っていました。一流選手のテークバックはどのように引いているのか、インパクトの位置は、フォロースルーの高さなどを調べていました。しかし、それはモデルの選手のことであり、他の人には当てはめようとしますが効果はあまりありません。

 

 

では、「経過分析」「機能分析」を、実際の指導を例に挙げてみます。

 

サービスの指導

 

<経過>理想の選手を見つけ動きを解析→M選手のサービスはトスを高く上げて、足に力をためて打っているから早くていいサーブになっている。

 

<機能>生徒のサーブの動きを観察する。→生徒の持っている身体能力のサーブになっているか。

 

<経過>M選手と生徒のサーブの動きの違いをチェックする→M選手より足に力が入っていない。
 
<機能>サーブで上手く機能していない箇所をチェックする。→足を曲げすぎて運動連鎖のタイミングがおくれている。

 

<経過>理想の選手の動きに近づくような指導を行う→トスを高く上げて、しっかり足に力をためるための時間を作りなさい。

 

<機能>力の伝わらない原因を説明する。→足をあまり曲げないで1秒前後でボールを打つように。

 

 

 

このように「経過分析」とは、指導者が理想の選手のショットを見て、診断して自分の独自の理論で、解説、矯正してしまいます。当然、身体的・感覚的に近い選手であればそのアドバイスが合うこともあるかもしれませんが、ほとんどの選手は上手くいきません。

 

 

すなわち、打ち方の方法だけを教えているので、選手個人がどのような能力を持っていて、どれぐらい機能的に使えているかなどを無視して、テクニックの解析に合わせることを目的に焦点を当てている指導法と言えます。

 

 

では「機能分析」とはどのようなものでしょう。初心者を教える方法で理解して下さい。まず、昔はグリップの持ち方、テークバックの位置、インパクトの位置、フォロースルーの位置など形から教えていました。今は、ボール遊びや、ボール突きなどの感覚機能からアプローチします。ボールがある程度コントロールできれば、あとはボールの弾道をイメージさせればラリーはできます。

 

 

これは本人が持っている運動能力を感覚機能から引っ張り出してイメージ力で神経回路をつなげた方法です。これからのコーチは、身体にもともと備わっている能力を理解して、どの機能を使えばうまくプレーできるかを分析・改良する指導に変わらなければいけません。

 

 

1982年からコーチを始め、ウッドのラケットの時代からテニスの近代化と共に指導法の変化を見てきました。指導法の変化は、用具の変化と科学の進歩によってもたらされたものです。ボールのスピードが上がるたびにテクニックが戦術が変化し、改良が進められてきました。

 

 

しかし、科学が発達している中で、日本のテニス指導は旧態依然として進んでいきませんでした。私も勉強不足で数多くの選手の可能性の芽を摘んでしまいました。このことを自戒して、これから指導者を目指す人たちに、1つでも役立てる情報を発信したかったのが、このサイトを立ち上げた大きな理由の一つです。


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