指導者に必要な基礎学習とは

 

「テニス指導者の基礎学習」を見てもらえば分かりますが、テニスコーチの資格試験で勉強することは、指導する上で最低限必要とされるもので、基本的な知識を2つのカテゴリーで書いてあります。

 

 

1つは指導者全般の知識としての共通分野。例えば、スポーツ指導論、トレーニング論、指導計画と安全管理、救急法、栄養学・・・などがスポーツ指導者の基礎知識になります。

 

 

2020年東京オリンピックに向けて、日本のスポーツ界が変化をしています。指導者の質とレベルをあげる指針も出ています。昨年度(2014年度版)のテキストには新しく「スポーツ指導者の倫理」が登場しました。暴力行為やハラスメント、さらにはドーピングなどの倫理に反する事柄を指導者が認識するためのものです。

 

 

2つ目はテニスコーチの知識としての専門分野。テニスの技術、テニスの科学、テニス指導の実際など、テニススクールでレッスンすることに対しては十分な内容があります。

 

 

例えば、テニス指導教本のバイオメカニクスの項で、安定したインパクト時の手関節周りの筋活動が手首を固定する働きをしている説明があります。これを勉強していると、ボレーが不安定な場合のアドバイスでは「インパクトでは手首を固定しましょう」が有効なアドバイスとなります。このようなテクニックに関してのアドバイスの裏付けがたくさん載っているからです。

 

 

選手育成を目指すテニスコーチは、この解説している指導教本、共通テキストTだけでは足りない部分が出てきます。さらに、共通テキストU・Vの理解や、もっと深くバイオメカニクス、運動生理学、トレーニング論、栄養学、大脳生理学などを学ぶことが必要です。

 

 

例えば、一般のジュニアを指導する場合は、テクニックやゲームの楽しさを教えることが目標ですが、上位を目指す選手にはテクニックだけではなくフィジカルトレーニングや栄養管理、コンディショニング、戦術・戦略、メンタルなど試合に勝つための多岐にわたる知識が必要です。

 

 

テニスはスピードを制する者が勝ちます。その、スピードを作るのが脳の機能であり、筋肉の機能であり、眼の機能などです。これらのことを勉強することで選手を強くする基盤ができるのです。

 

 

テニスコーチの知識の中で一番重要なものは、身体機能の勉強です。これは、人間である以上変えられないものであり「絶対基本」と呼ばれるものです。人間を教えるのに、人間のことを知ることが重要なのは当然のことです。

 

 

特に、ゴールデンエイジと呼ばれる時期の練習内容は、その選手の将来を決めてしまうといっても過言ではありません。

 

 

例えば、12歳ぐらいまではいろいろな動きを取り入れたレッスンが大切なのは、この時期に身体を複雑に動かすことができる神経の回路ができるからです。運動神経はこの時期に形成されます。よくコーディネーショントレーニングと呼ばれるものです。

 

 

中学生のころにランニングが大切なのは、この時期に肺など呼吸器系、心臓や血管などの循環器系の発達がとても活発になるからです。これらは、アスリートの持久力、スタミナをつけることに対してとても重要な時期です。心肺機能が発達することで最大酸素摂取量が飛躍的に伸びます。

 

 

これらの内容はスキャモンの発育曲線と呼ばれ、発育のアウトラインを知るうえで有効なものです。これをベースに、身体機能の中で成長する時期に合わせた指導内容が決まり、レッスンに落とし込まれるという考え方を理解することです。このような考え方の基礎理論は「ジュニア期のスポーツ」を見れば分かります。

 

 

その、基礎学習で学んだ知識から選手への落とし込み方法は、コーチ・指導者のアイデアであり、閃きであり、センスであるといえます。知識を使って行動しそれを知恵に変えて行くことがこれからのコーチ・指導者に求められているのです。

 


HOME はじめに お問い合わせ プロフィール